伝わる想い 第四十六話「分岐点」

Written by kio









 美坂の居ない美坂チーム。
 だけど、今日は相沢と七瀬さんが久々に復帰を果たしているので、ここは喜ぶべきところなのだろう。
 それに、昨日見た美坂は思った以上に元気そうだったし、相沢との不和も解決しているようだったので、美坂チームの完全復活ももう間近であろう。
 それよりも、当面の問題は相沢とあの少女の問題である。
 俺は相沢にそのことを尋ねるタイミングを事前に、この昼食時に定めていた。
 授業と授業との空き時間では時間が僅かしかなく本題を切り出す前に会話が終わってしまう危険性がある。
 流石に率直に訊ねることなんて出来ないしな。
 それに、昼食時なら水瀬が会話に参加しているため、話題が弾みやすいと言う考えもあった。

「ねぇねぇ、祐一。私、いちごのムースが欲しいな〜」
「名雪、お前な。ボケるのには少しばかり早いんじゃないか? 一番最初に食べただろう?」
「祐一のが欲しいな」

 上目遣いの物凄い可愛い声で水瀬が相沢を誘惑する(?)。
 思わずクラリときたぞ、俺は。

「やらん」

 しかし、相沢は慣れたもので、一言ビシリと拒否をする。
 ……俺だったら、誘惑に負けていたかもしれない。

「えー、祐一のけち〜」
「欲しかったら北川からでも貰えよ」
「えー、北川くんに悪いよ〜」
「俺にも悪いと思え」
「祐一だから良いんだよ〜」

 相変わらず二人は仲が良い。
 いつもと変わらずの自然体に見えるほどに。
 皮肉なことに、それが却って二人の無理に気付いてしまう。

 ──ほんの数日前にこの学校の生徒二人が死んでしまった。

 それが個々人で誤差の違いこそあれども学校全体に暗いムードを作ってしまっていた。
 彼女たちに面識がなかった生徒たちでこれだ。
 当事者の近くに居た俺たちは、当然心の底から沈んでしまっていた。
 しかし、だからこそ俺たち美坂チームの面々はいつも通りであり続けようとした。
 相沢が先輩たちと一緒に昼食を採っていたことを俺は知っている。
 そして、どちらの先輩もこの学校に来ることはないことも。
 だから、俺と水瀬で相沢を今日の昼食に誘った。
 相沢も察するものがあったのか、『いつも通り』に美坂チームに参加してくれた。
 その流れで七瀬さんも参加し、今の状況というわけだ。

 正直、相沢にあの少女のことをすぐに訊ねてみたい衝動にかられもしたが、今は俺たちが俺たちらしく振舞うことの方が大切だった。
 それでお互いが元気になれば、それ以上言うことなんてないんだ。
 そして、美坂が学校に帰ってきた時、美坂チームは本当の美坂チームになる。
 俺が適当に命名した美坂チームだったが、俺にとっては日常の象徴、楽しい学生生活を送る上でなくてはならないものだったんだ。
 だから、俺は俺らしくあろう。



 さて、話を戻して、いちごのムースか。
 自分のおぼんに乗っかった丸いプラスチック容器とその内容物を見る。
 今日は何故か美坂チーム全員がAランチだったため、全員のおぼんにそのデザートは乗っかっている。
 ちなみに、水瀬だけが食前にこのいちご加工物を食してしまっていた。
 それはいつものことだったのだが、今日は何しろ全員のおぼんにそいつは存在する。
 果たして、自分の手元に存在しない大好物はどれほどの旨さなのか?
 そう水瀬は考えているのかもしれない。
 人が食べているラーメンは旨そうに見えるのと同じ理屈だな。
 純粋に量を食べたいのかもしれないけど。
 俺はもう一度自分のいちごムースを目視する。
 旨そうだが、これで水瀬が喜ぶんだったら、別に良いよな。

「水瀬さん、良かったら私の食べる?」

 その声は俺の隣に座っていた七瀬さんだった。
 ……先を越された。

「えっ、七瀬さんいいの!?」
「どうぞ」
「わぁ、ありがとう」

 嬉しそうに水瀬が七瀬さんからいちごのムースを受け取ろうと手を伸ばす。

「七瀬さん、いいって」

 相沢が水瀬よりも先に、七瀬さんのいちごのムースを取り上げてしまう。

「うぅ、私のいちご〜」
「はい、七瀬さん」

 ゾンビのように縋る水瀬を空いている片手で追いやって、相沢が七瀬さんに返品する。

「え、でも、水瀬さんが……」
「いいっていいって、こいつを甘やかしていたら限がないから」
「そ、そうなの?」

 七瀬さんが戸惑いながらも、相沢からいちごのムースを受け取る。

「祐一のいじわるー」
「なんとでも言え」
「ゆ、祐一なんかねこさんを触れない体になっちゃうんだよ」
「それはお前のことだろ」
「うぅ〜、祐一なんか祐一なんか……うぅ」

 上手い言葉が見つからなかったらしい。

「え、水瀬さんの悪口ってそれが限界……?」

 七瀬さんが何とも言えない表情で、水瀬のことを見ている。
 何となく保護者っぽく水瀬の相手をしている相沢、相沢の悪口を一所懸命に考えている水瀬、実は傍観者な七瀬さん、それ以上に傍観者な俺。
 ちらりと相沢が俺のことを見た。
 『突っ込め、突っ込めよ、北側』
 そう、相沢の目は訴えていた。
 ……何故アイコンタクトなのに、北側って誤字が分かるんだ、俺?
 まぁ、それはそれとして、今が会話に入りこむ絶好の機会だろう。
 ここから、俺が主導権を握れば、自然にあの話題に移ることが出来るかもしれない。

「分かったぜ、相沢」
「おお、分かってくれたか親友」
「ああ、お前は俺が何か言うのを待っていたんだな?」
「その通りだ。一つ強力なのを頼むぜ」
「分かっている」

 俺と相沢は親指を立てて、互いの意思疎通を図る。
 さて、ここで俺が主導権を握るためにはどうすれば良いのか?
 答えは簡単だ。
 この場を、俺のペースに乗せてしまえば良い。
 つまりはこういう感じだ。

「水瀬」
「何かな、北川くん?」

 ここで間を置く。
 相沢にさも分かっているような感じでアイコンタクトを送っておくことも忘れない。
 そして、おもむろに俺はおぼんから『それ』を取ると。

「俺のいちごのムースをやろう」

 ゴンッ

 相沢が昭和のコントのような頭のぶつけ方をする。
 でも、相沢の昼飯には被害一つなかった。

「違うだろ、北川! 俺が求めているのは突っこみ! 強力な突っこみなんだ」
「そ、そうだったのか……」

 ガクッと俺は顔を伏せる。
 北川潤、一生の不覚。
 と言うことにしておこう。

 スッと、俺の手の中からいちごのムースの感触が消える。
 顔を上げると水瀬がムースを手に取っているところだった。

「北川くん、ありがとう」

 水瀬の語尾にハートが見えた。
 さて、ここからだな。

「相沢、俺頑張ったよな」
「何を?」
「精一杯頑張ったよな」
「いや、わけ分からんって」
「だから……だからさ」
「おーい、北川?」

 お前、頭大丈夫か? そんな感じの目で相沢が俺のことを見る。
 これで良い。
 俺がおちゃらけたキャラクターであることを、こいつに印象付けられれば後の会話はすんなりといく。

「もう終着点に着いてもいいよな」
「……何かよく分からんが、お前の中で盛大な物語が形成されているのは分かったような気がする」

 俺は終着点に着いたふりをして(終着点って何だ?)、目を瞑る。

「おいしいよ〜」
「あ、おい、名雪っ」

 相沢の制止も空しく、俺のいちごのムースが水瀬の口の中に消えていく。

「……何、この空間……」

 一人取り残されていた七瀬さんの冷静な声が聞こえたような気がした。





 とりあえず、水瀬以外は食事を終え、水瀬が食べ終わるまでの雑談の時間が続く。

「そういえばさ、相沢」
「ん?」

 ここからが本題だ。
 俺はどうしても相沢にあの少女のことを確認しなければならない。

「お前の家……って言うか水瀬の家にさ、肉まんを主食とする妖怪のような女が居候しているとか言っていたよな」

 かなり前の話だったが相沢が雑談程度にそんな話をしていたのを、昨夜思い出していた。
 今思えば、その話題の女性とあの子が同一人物と言うのは考えられない話ではない。
 同一人物だったら御の字だし、違っていたら話題を変えれば良いだけの話だから、このことを訊ねてみるのは無駄なことではないだろう。

「ああ、真琴のことだろ」

 真琴、ちゃんか。
 それがあの子の名前なのだろうか?

「でさ、お前の知っての通り、俺ってコンビニでバイトしているんだよ」
「初耳だぞ」
「あれ? そうだったか? まぁ、いいや。そこでさ、肉まんが毎日、腐るように余るわけよ」

 バイトをしているのは本当の話だが、肉まんが腐るように余ると言うのはもちろん嘘だ。
 この真冬の時期だ、肉まんは当然だが飛ぶように売れる。
 だから、売れ残ることなんて、ほとんどありえない話だ。

「この季節にか?」

 相沢からも当然のようにそんな疑問を向けられる。

「ああ。おかしな話だよな。冬と言ったら肉まんが馬鹿売れするはずなのに、うちのコンビニだけ妙に余るんだ」
「それって、不味いだけなんじゃ……」

 七瀬さんがぼそっと呟く。
 ナイスだ、七瀬さん。
 俺は彼女の突っ込みに感謝して、話を続ける。

「いやいや、七瀬さんそれが違うんだって。正直、他の店よりも旨い。これは保障できる」

 これは結構本当の話だったりする。
 何しろ、俺の働いているコンビニは、同業界の中ではファーストフードに一番力を入れている某有名コンビニエンスストアだからだ。

「つーか、余るんだったら、置く数をそれなりに調整すれば良いんじゃないか?」
「それが店の方針だかなんだかで、毎日一定の数の肉まんを仕入れなければならないらしくてさ」

 ごめん、今の台詞全部嘘。

「それ、経営方針間違ってるから」
「まぁ、コンビニって言っても、チェーン店じゃなくて、道楽でやってるような店だしな。それで、本題だ。相沢、うちで肉まんを買ってくれ!」

 ここからの話の持っていき方によっては、相沢が真琴ちゃんのことをどう思っているのかが分かるはずだ。
 この確認は美汐ちゃんとの約束だったから、破るわけにはいかない。
 もっとも、あの子が『真琴ちゃん』だったらの話ではあるが。

「いや、そう言われてもな……」
「店が儲かる、肉まんが主食の少女は美味しい肉まんで喜ぶ、さらに俺も店長に褒められて自給アップ。どうだ最高だろう?」
「それ、結局はお前が得してるんじゃ……」
「あんまり深く考えるな」
「それにコンビニの肉まんって高いだろ」
「大丈夫だ、うちの肉まんは一つ425円だ」
「高えよ」
「それが、売れない理由だと思うんだけど」

 相沢に七瀬さん、その通りだ。
 俺もそう思う。
 もちろん、嘘八百なわけだけど。

 冷静に、自然な流れで真琴ちゃんの話になるように考えながら、話を進めていく。

「ねぇねぇ、北川くん」

 ようやく昼食を終えた水瀬が会話に参加してくる。

「そうだ、水瀬からも相沢に言ってやってくれ。俺のコンビニで肉まんを買えと」

 正直、水瀬が話題に参加してくれた方が話を持っていきやすい。

「ええとね、うちにもう真琴は居ないんだよ」
「へっ?」

 ワザとらしく疑問の言葉を浮かべる俺。
 水瀬のその言葉の時点で、あの子がその真琴ちゃんであることをほとんど確信出来たようなものだった。
 ついでに、上手いこと真琴ちゃんの話題に移れたようでもある。

「真琴ね、記憶が戻ったらしくて自分の家に帰っちゃったんだよ」

 あの子が真琴ちゃんであることは確定したな。
 それよりも気になるのは、記憶が戻ったと言うことだ。
 昨日の美汐ちゃんの話からは、そんなことがありえるとは思えなかった。
 いや、戻ったとしたら、狐である彼女の居場所はものみの丘しかないんじゃないのか?
 昨日、真琴ちゃんが倒れていた場所はものみの丘とは正反対の方向で、しかも相沢の家からの道筋とは全く関係のない場所と言い切っても良いところだった。
 断定はできないが、彼女はあてもなく彷徨っていたのではないのだろうか?
 本当は記憶を取り戻したわけじゃなくて、相沢の迷惑になるから去っただけなんじゃ……。
 あくまで推測に過ぎなかったが、真実に近いような気がした。

「え、マジか、相沢」

 我ながら白々しかったと思う。
 だけど、俺が真琴ちゃんのことを知っていると今の段階でこいつに悟らせてはいけない。
 相沢なら大丈夫だとは思うが、それでも美汐ちゃんの昨日の言葉を思うと相沢の気持ちを確認してからでないと明かすわけにはいかなかった。

「ああ、あいつは自分の居場所を思い出したんだ。俺たちの元じゃなくて、本当に大切な居場所を」

 待てよ、相沢……。
 そんな……なんで、お前が納得しているんだよ……。

 予想もしていなかった相沢の言葉に、俺は激しく動揺していた。
 自分の表情が今どうなっているのか分からない。
 俺の心情を知らずに、相沢は言葉を続ける。

「本当に良かった……。あいつは俺と一緒に居るべきじゃないんだ。俺のためじゃなくあいつはあいつのために生きていてくれればそれでいい」

 小声で相沢は呟いたようだったが、その言葉は俺の耳にしっかりと届いていた。
 ──そして、その言葉が相沢の本心だと分かってしまった。

「そっか……。残念だな、せっかく自給アップの機会だったのに」

 美汐ちゃんの予想した理由とは違っていたが、それ以外は彼女の言葉通りになってしまった。

 本当は相沢に言ってやりたい。
 真琴ちゃんは今も苦しんでいて、いつその命を終わらせてしまうかも分からないんだって。
 だけど、出来なかった。
 相沢のあの幸せそうな表情を見てしまったら。
 相沢は本当に真琴ちゃんの幸せを願って笑っていたんだ。
 今は幸せに生きているだろうと笑っていたんだ。
 俺に何が言える?
 そうだな、美汐ちゃんの言う通り俺は部外者に過ぎない。
 そんな俺があいつの……真琴ちゃんが望んだのかもしれない笑顔を壊せるわけがないじゃないかっ!!

「まぁ、今度買いに行ってやるから元気出せよ」
「うぅ、相沢いい奴だな……」

 相沢は俺が落ち込んだ真意には気付かなかったようだった。
 今の俺にはそれに感謝するぐらいしかできない。



 ──ごめん、真琴ちゃん。俺は無力だ……。










「なあ、北川」

 学食から教室へと廊下を歩いていると相沢が小声で俺の名前を呼んだ。
 ちなみに、水瀬と七戦さんは少し離れて前の方を歩いている。

「なんだ、相沢?」

 もしかして、気付かれたのか?
 駄目だ。今となってはそれだけは駄目なんだ。
 内心動揺しながらも、相沢の言葉を待つ。

「礼を言いたくてな」
「礼?」

 真琴ちゃんのことでなかったので、ほっと息をつく。
 しかし、礼とは何に対してのことだ?

「お前さっき無理していただろう?」

 無理と言えば無理だが、それを言うなら。

「そう言うお前こそ無理してただろう?」

 俺なんて、お前から話を聞きだすために、計算して会話していたんだぜ。
 本当なら、お前に礼を言われる筋合いなんてないんだよ。
 でも、それを口にしてしまったら、全てが水の泡になってしまう。
 だから、本心を告げることは出来なかった。

「いや、あれは素だ。名雪と話していれば自然とああなるさ」

 ……そうだな。水瀬さんにはそういう不思議な雰囲気がある。
 誰にも真似出来ないそんな雰囲気がな。
 それが、彼女の魅力の一つだと俺は思っている。

「それじゃ、俺も素って言うことで……ってそれだと俺は馬鹿っぽい奴じゃないか」
「でも、お前って素だと馬鹿っぽいじゃないか」

 グサッ

 美汐ちゃんにも言われたから多少は理解しているつもりだったけど、相沢にもそう見えていたとは……。
 今本当の意味で、俺の全校生徒たちからの認識を理解出来たような気がする。
 ……生き方変えようかな。

 冗談を言う相沢の表情が一転、苦笑いのようなものに変わる。

「それはともかく、正直しんどかったんだよな。俺を見る皆の目がな」

 俺もそれは気づいていた。
 栞ちゃんはともかく、川澄先輩と倉田先輩に関しては、相沢が先輩たちの最も近くに居たことをほとんどの生徒は知っている。
 だから、ほとんどの奴は相沢を見つけると腫れ物を見るような目で見ていた。

「だけどさ、お前たち、美坂チームって言った方が良いのか? に居るとさ、安心出来たんだ。ほんの少し前の日常に戻ったような感じがして。だから、感謝しているお前には」

 それは初めて聞く相沢の弱音だった。
 そうだ、相沢も人間だ。
 心がどうしようもなくしんどくなることだってある。
 それを俺は妄信して、相沢なら大丈夫だ、相沢なら受け入れてくれるとか考えて……俺は馬鹿か!
 いや、その考え事態は間違っていないかもしれない。
 だけど、その負担は俺が想像していたもの以上だったんだ。
 川澄先輩、栞ちゃんを失い、倉田先輩は入院。
 これ以上、こいつに重荷を背負わせるなんて──。

「悪い」
「は?」
「いや、ただ言いたかっただけだ。それよりもさ、感謝の言葉だったら水瀬と七瀬さんに言えよ」
「名雪は、まぁ、その幼馴染だし、あれだな」
「珍しくはっきりしないな」
「気にするな。あと、七瀬さんにはもう言ってある」
「そうか」

 相沢と七瀬さんはお互いが転校生同士ということもあるのだろうが、それ以上に何か特別な関係であると前々から察してはいた。
 彼氏彼女の関係ではないのだろうが、互いに互いを信頼しているそんな関係。
 だから、これ以上俺から言うことはない。



 ピンポンパンポーン



「ん? 校内放送か?」

 相沢との話も終えたので、放送に聞き耳を立ててみる。

『二年の相沢祐一君、水瀬名雪さんは至急職員室に来てください』

 どこかで聞いたことのある声がアナウンスをしているようだった。
 あ! 丁寧語で言っていたから一瞬気付かなかったけど。

「あれ、石橋じゃないか。って、お前と水瀬呼ばれているぞ」

 相沢を見ると、一目で険しい表情をしているのが見て取れた。

「相沢?」

 相沢は俺の呼びかけに答えることなく、水瀬の方を見ている。

「行くぞ、名雪」
「うっ、うん」

 よく分からないと言った様子の水瀬だったが、相沢の勢いにつられて相沢の後ろについていく。

『繰り返します、二年の相沢祐一君と水瀬名雪さんは──』

 この放送の時点で予感はあったんだと思う。
 相沢と水瀬は午後の授業に出ることはなく早退し、翌日から二人は学校を休んだ。










 ──その後担任から、水瀬のお袋さんが交通事故に遭い、意識不明の重体だと聞かされた。























第47話へ