俺は彼女と小さな約束をした



それは幼い日の懐かしい思い出



彼女と共に同じ時を過ごす、ただ、それだけの約束



だけど、俺はそんなちっぽけなことさえ守れなくて



彼女の強さに甘えてしまって



遂に8年の年月が経ってしまった



それでも、俺は今からでも約束を守りたい



俺と彼女と2人だけのただ一つだけの約束を















叶うなら彼女と共に






































伝わる想い 第十三話「ある夜の会話」

Written by kio










「よう、舞」

「・・・よう、祐一」


西洋刀を携え、廊下に佇んでいた舞に片手を振る。もちろん、もう片方の手には昨日同様差し入れの袋が提げられている。ちなみに昨日よりも少し重い。

それにしても、深夜の学校に侵入するのも今日で三日目になるわけで、この学校の管理体制が本気に心配になってくる今日この頃だ。

・・・とりあえず、舞に差し入れをやるの方が先か。俺はコンビニ袋から大き目の丼の容器を二つ出す。そこからは食欲をそそるなんともいえない良い香りがする。


「今日は牛丼だぞ」


俺は舞の前に牛丼を差し出し、割り箸を手渡す。


「・・・牛丼、凄く嫌いじゃない」


おぉ、今日は『凄く』がついたぞ。つまりは大好きということだろう。・・・どことなく舞のしゃべり方は遠回りをしているような気がする。まあ、とりあえずは舞の大好物は牛丼。と俺は頭にインプットした。


「もぐもぐ」


・・・別に舞がもぐもぐ言っているわけではないが、何となくそう聞こえてしまう。そして、それは俺の食欲をもそそる食べっぷりだった。

と言うわけで、俺も食べる。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


「うまかった」

「・・・美味」


俺たちは思い思いの感想を述べる。というか牛丼はうまかった、ただそれだけなのだがな。

満腹の余韻に浸り、腹も落ち着いたところで俺はかねてからの疑問を口にする。


「ところでさ、魔物、全然現れないよな」


昨日も結構長い時間、舞と一緒に学校に居たが、それらしきものは全く姿を現さなかった。


「(こくり)」


舞は無言で肯定する。・・・それだけ?舞の反応があまりにも淡白なので俺は質問を変えてみる。


「ここ寒いよな」


関係あるような、ないような質問。


「(こくり)」


・・・・。


「俺、寒いの苦手なんだよ」


「・・・軟弱」


やっと、答えらしいものが返ってきたが、舞に言われると何かむかつく。

だから、俺は聞こえないふりをする。


「だからさ、別に毎日、こんな時間に学校に来なくてもいいような気がするんだよ。俺としては」


「・・・(こくり)」


へっ?肯定するのか舞。


「魔物は今週一週間は現れない」


「・・・は?」


俺は舞の言葉に耳を疑った。


「祐一に会う前の日に深手を負わせたから今週いっぱいは大丈夫」


・・・ええと、つまりは、ここに居ても意味がないということで。


「・・・なんで、お前はここに居るんだ?」


普通、そういうことが分かっているなら来ないはずだ。ん、もしかしたら、俺がここに来ているからか?でも、舞には今日も俺が来るということを伝えていないはずだった。まぁ、それでも舞だったら待つかもしれないが。


「・・・・・・・・・」


沈黙が何か長い。・・・もしかして、俺のことは関係ないか?少し寂しい気もしないわけでもない。

だが、舞の答えは俺の予想の範疇を遥かに越えていた。


「・・・日課」

「家に帰れ」


その言葉のインパクトのどんなに大きいことやら。俺は本気で呆れたぞ。


「祐一、冷たい」


・・・無視しよう。


「とりあえず今週はもう来ないよな」

「・・・・・・たぶん」


沈黙がまたしても長かった。

・・・たぶん、釘をさしておかないと、こいつは絶対にここに来る。断言してもいい。


「今週はもう来ないよな」


さっきよりも言葉に力を込めて言う。このときに舞の目を見て言うのも忘れてはならない。


「・・・来ない」


とりあえずは一安心、というところか。

























「祐一」


「何だ?」


帰り際、舞は俺を引き止めて言う。ちなみに牛丼の残骸は俺の教室のゴミ箱の中だ。


「私、実は冷え性」


「・・・いいから、帰れ!!」


俺は今日1日で舞という女性の新たなる一面を知ってしまったような気がする。















































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